おはなし

2019年02月のおはなし

ジャータカのえほん① おばあさんとクロ

文:豊原大成 絵:小西恒光 出版:自照社出版

むかしむかし、おしゃかさまは牛の子どもとしてお生まれになりました。
かいぬしにつれられて、たびをしていたとき、とちゅうでとめてもらった家に、子牛はおれいとしておいていかれました。その家には、おばあさんがひとりですんでいました。おばあさんは子牛に「クロ」という名まえをつけ、じぶんの子どものようにかわいがってそだてました。クロはたくましくそだち、おばあさんにおんがえしをしたいと、かんがえるようになりました。
ある日のことです。たび人が五百台の車を牛にひかせて、クロの家のちかくの川をわたろうとしていました。しかし、川にははしもなく、ながれがはやくてわたれません。そのとき、クロはたび人のところへいき、「わたしにおまかせください」といって、車をぜんぶむこう岸へわたしてあげました。たび人は、たいそうよろこんで、クロの首にふくろをぶらさげ、たくさんのおかねをいれて、クロをかえしました。おばあさんは牛のばんにんから川でのできごとをきき、「おまえにくろうをさせたね」といって、なみだながらに、クロのからだをおゆであらい、すきなものをたべさせて、いたわりました。