2019年06月のおはなし
文:豊原大成 絵:小西恒光 出版:自照社出版
町にかえると、おとこはぞうのきばを売るみせへ行って、たずねました。
「生きているぞうのきばと、死んだぞうのきばとでは、どっちがいいの」。
みせの人は「生きているぞうのきばのほうが、ずっとねだんが高いよ」と、こたえました。
おとこはさっそくよく切れるのこぎりを持って山にもどり、ぞうに「わたしはとてもびんぼうです。きばをすこしください」とたのみました。
ぞうは「どうぞ」といいました。「しかし、きばはわたしのたからものなんですよ」。
おとこはのこぎりでぞうのきばの先をきりとって、町へ持ってかえり、それを売ってお金をもうけました。
おとこははたらかず、まいにちあそんでばかりいたので、やがてお金がなくなってしまいました。おとこは、また山に行ってぞうのきばをもらい、それを売って金もうけをしました。
しかし、またお金がなくなったので、おとこはぞうにきばをもらいました。
なんという心のやさしいぞうさん、なんというおんしらずなおとこでしょう。
ところが、そのかえり道、じめんがものすごいおとをたててわれ、おとこはじごくにおちてしまいました。おんしらずだったからです。
ぞうは生まれかわって、おしゃかさまになりました。