2019年07月のおはなし
文:豊原大成 絵:小西恒光 出版:自照社出版
むかしむかし、森のなかにかしこいさるがすんでいました。
さるがすんでいる森のちかくには、大きな川がながれていました。川の中ほどには島があり、おいしいくだものがたくさんなっていました。
さるは、まいあさ、川のとちゅうにある岩をふみこえながら島にわたり、くだものをたべて、夕がたくらくなると、森へかえっていました。
その川にはおそろしいわにがすんでいました。わにはさるの肉がたべたくなったので、岩にばけて、さるをつかまえることにしました。
ある日の夕がた、わには岩の上にねて、さるをまちかまえていました。
さるは、岩がいつもよりせがたかいので、「へんだぞ」とおもい、「おい、岩よ!」と、三どこえをかけました。
わには、さるがいつも、岩とはなしをするのかとおもい、「おお、なんのようじだ」とへんじをしました。
さるが「おまえはだれだ」と、たずねました。
わには「わにだ」とこたえました。
さるは「ぼくをたべたいのなら、口をあけてまっていろ」と、いいました。
わにが口をあけると、目をつむることを知っていたからです。
さるは、目をつむったわにの頭をふみこえて、川をわたり、ぶじに森にかえりました。
このかしこいさるが、生まれかわっておしゃかさまになられたということです。