心に残る一言

「人は皆、しあわせを求めて生きている」
ということが、よく言われます。このことについて異論はありませんが、もう少し厳密に言うと、
「人は皆、『自分のしあわせ』を求めて生きている」
と、なるのではないでしょうか。もしかしたら、皆ではないのかもしれませんが、ほとんどの人は、他人のしあわせより、まず、自分のしあわせを第一に考えて、生きているのではないかと思います。
「雨ニモマケズ」で有名な詩人・童話作家の宮澤賢治は、
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」
という言葉を残しています。私は、私以外のすべての人と繋がり合い、支え合って存在しており、私と他の人は切り離せない存在です。ですから、他の人がしあわせにならないかぎり、私のしあわせは、ないはずなのです。これが、本当のしあわせのあるべき姿なのです。
ところが、私がそのようなしあわせを求めているかといえば、正直言って、どこまでも他人のしあわせより、自分のしあわせが大事なのです。ただ、「世界中の人々が、しあわせになってほしい」という思いが、私の中に全く無いわけではありません。しかし、その思いが本当かと問われると、「嘘ではないけれど本当でもない」としか言えません。
「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という言葉を、私が言えば嘘になるけど、仏さまの言葉として、受け止めさせていただきたいと思っています。
合掌

龍谷大学非常勤講師 小池秀章