心に残る一言

台風がやってくると思い出すことがあります。
昔、筑紫哲也さんというニュースキャスターがおられました。その筑紫さんが司会のニュース番組があり、その中に、「多事争論」というコーナーがありました。その時々に筑紫さんが気になっていることを取りあげ、数分間でコメントするというものでした。
ある時、「台風心理」という言葉を掲げ、コメントをされました。
『ある若いニュースキャスターが、台風情報について伝えていました。関東を直撃しそうだということで、注意を呼びかけます。そして、ついに、関東を台風が直撃しました。しばらくして台風が通り過ぎた時、その若いニュースキャスターは、ほっとした顔をして、「皆さん、ご安心ください。台風は、もう東北の方へと抜けて行きました」と、伝えました。
関東の人たちは台風が抜けて安心でしょうが、東北の人たちは今まさに台風直撃の最中なのです。このような報道をしてしまうことは、台風が迫ってきた時の人間の心理として、ありがちなことかもしれませんが、ニュースキャスターとして、気をつけなければならないことでしょう』
この内容は、まさに仏教で説かれていることと重なり、常に自己中心の心から離れられず、自分を中心に物事を判断しているということに気づかせてくれるものでした。
自己中心の見方をやめることはできないけれど、常に自己中心に物事を判断してしまっているということは、忘れないでいたいと思います。
合掌

龍谷大学非常勤講師 小池秀章