心に残る一言

宇野正一さんは、幼い頃からずっと、おじいさんに、「食べ物さまには仏がござる拝んで食べなされ」と言われて育ち、それを信じていたそうです。
ところが、小学5年生の時、学校で顕微鏡について習い、米粒の中に、あの金ピカの仏さまがいるか調べてみたけれど、いませんでした。先生に聞いても、仏さまなんかいないと言われました。「長い間、だまされた」と思い、「おじいさんはウソをついた。いつも、食べ物さまには仏がござるって言うけど、今日調べてみたら、仏さまはいなかった」と文句を言いました。
するとおじいさんは、とても悲しそうな顔をして、「この、ばかたれが」と言ったきり、お仏壇の前で手を合わせ、ただお念仏するばかりでした。宇野さんは、そのおじいさんの姿が忘れられなかったそうです。やはり、あのおじいさんがウソをつくはずがない。食べ物の中に仏さまがいるのではないか。一体、仏さまとは何なのか。
それから、宇野さんの仏さまを求める人生が始まりました。そして、あのおじいさんの言葉は、「私が食べ物だと思っているものが、実はいのちそのものであり、そのいのちが私を生かしてくれている」ということを教えてくれる言葉だったと気づくのです。
仏さまは、私のいのちの本当の在り方に気づけと、常にはたらき続けてくださっています。自分勝手な見方にとらわれている私たちだからこそ、仏さまを拝み、仏さまの教えに耳を傾けることを、忘れないでいたいと思います。
合掌

龍谷大学非常勤講師 小池秀章