心に残る一言

私たちは、「善いことをしようと思えばできるし、悪いことをやめようと思えばやめられる」と思っています。本当にそうでしょうか。
確かに、ある程度は、自分の思うように行動することもできるでしょう。しかし、自分の意志に反して、そうしてしまう、もしくは、そうせざるを得ないということも、あるのではないでしょうか。
親鷲聖人は、
「しかるべき縁があれば、どのような行いもするものである(さるべき業縁のもよほさば、いかなるふるまひもすべし)」(「歎異抄』第十三条)
と、仰っています。私たちは、そうせざるを得ない縁に会えば(条件がそろえば)、どのようなこともしてしまう、危うい存在なのです。
また、大神信章氏は、
「何がおきるか分からないこの人生を何をしでかすか分からないこの私が生きている」(「学仏大悲心』)
という言葉を残されています。私の思い通りにならないこの人生を、私の思い通りにならないこの私が、生きているのです。
そのような私を心配して、いつも見守っていてくださる仏さまのお心を聞かせていただく中で、私という存在の危うさを忘れないでいたいと思います。
合掌

龍谷大学非常勤講師 小池秀章