「今は少しさぼってしまったから、明日からがんばろう」と思うことはありませんか?私はよくあります。その時の気持ちに嘘はないのですが、次の日になるとその気持ちを忘れ、まただらだらしてしまうことも多々あります。
そして、再び「明日からは絶対がんばろう」と思うのですが、また次の日になるとその気持ちを忘れてしまうということの繰り返しです。「今」を大切にできない人が、「明日」を大切にすることはできないのです。なぜなら、私たちが生きているのは、常に「今、ここ」だからです。
親鸞聖人の得度(出家)に関して、次のような話が伝わっています。親鷲聖人(9歳)が慈円僧正のもとを訪ね、得度の式を受けることを願われた時、夕方遅かったので、慈円僧正は「今日はもう遅いので、得度の式は明日にしましょう」と言われま
した。その時、親鷲聖人は、
「明日ありと思ふ心のあだ桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」
という和歌を詠まれました。この和歌は、
「明日があると思っていても、今は満開に咲いている桜が、夜中に嵐が吹いて散ってしまうかもしれない。それと同じように、この私の身も心も明日はどうなるかわからない」
という意味です。慈円僧正はこの和歌に感動し、すぐに得度の式をされたということです。
私たちも、この和歌を通して、「今、ここ」を生きることの大切さに気づかせていただきましょう。
合掌
龍谷大学非常勤講師 小池 秀章